身体で考える
例えばボールを遠くへ蹴ろうとするとき、膝から下だけを使うより全身を使ったほうがより遠くまでボールを運ぶことができると誰もが思う。 でも、深くまで思考しようというとき、頭だけを使って考えていることに気づかない人は多い。自分…
例えばボールを遠くへ蹴ろうとするとき、膝から下だけを使うより全身を使ったほうがより遠くまでボールを運ぶことができると誰もが思う。 でも、深くまで思考しようというとき、頭だけを使って考えていることに気づかない人は多い。自分…
高校3年生のときくらいに、自分の言葉が借り物ばっかりなことにふと気づいた。 学校とか親とか読んだ本から得た言葉をパッチワークにして、普段の思考や言動をしているんだと気づいてしまった。それからは、とにかく自分の言葉を持たな…
むかし、知人の漫画家と技術は個性足り得るか、みたいなことをえんえん議論した思い出がある。 僕は「技術は再現性があるもので、再現性があるものは本質的に模倣できるので個性足り得ない」みたいな主張で、相手は「技術をかけ合わせた…
無明について何かを書こうと思ったけれども、それこそが無明の言いなりになってしまってはいないかと、ふと思った。 多くの人の共感をよぶような生き方をしようとすることや、がんばって一生懸命に死のうとすることも無明だ。 伝えよう…
妻と祖師ヶ谷大蔵に、ラーメンどんぶりを買いにいこうということになった。祖師ヶ谷大蔵に、都内でも有数の美味しいラーメン屋さんのどんぶりをつくっている窯元があるのだ。 曇天で、どういうわけか長袖のTシャツにウィンドブレーカー…
涼子は、同じ保健委員のスエハラくんに恋していた。 月に一回、保健だよりを作るときが涼子の人生最大の幸せタイムだった。なぜなら、スエハラくんと保健室にふたりきりの時を過ごせるからだ。 その月に一回のチャンスでじわじわと距離…
その看護師が、かつて幾度となく薄暗い小部屋で共に夜を過ごした娼婦だと気づいたのは、医師に呼ばれて診察室へ入った直後のことだった。 「こんにちは。今日はどうしました?」と太った内科医が尋ねる。 「あっ、ええと」慌てて言い淀…
実家の団地の屋上に登るのは、いつ以来だろうか。父が死んだあとずっとひとり暮らしだった母が亡くなり、葬儀がひと段落して、私は柄にもなく感傷的になっていた。 空は、燃えるような美しい夕焼けだ。かつて両親とともにこの団地の屋上…